ボトリングサービスは1つの樽原酒から2種類のボトリングが可能であり、ボトル、容量、デザインなどは、それぞれ別で作成することができる。
今回は新宿のバー「BAR FIVE Arrows」がWhisky Cask Investmentと共同で作成したオリジナルボトルへの想いと、ボトリングへのこだわりについて伺った。
インタビュー
『2つの希少性を兼ね備えた原酒』
- 今回作成したオリジナルボトルに、アレンジとしてカスクストレングス(加水処理等を施さない樽から出したままの状態の原酒)にした理由を教えてください。
今回のボトリングにあたって、原酒をボトル詰めする前にテイスティングさせていただきました。その際、事前情報として「グレングラッサの8年熟成+カスクストレングス」ということを聞いていたので、初めは飲みやすいウイスキーに仕上がっているか心配でした。というのも、一般的にカスクストレングスのウイスキーは、樽から出した状態そのままのウイスキーでアルコール度数が高く、原酒の個性が強く表れることから好き嫌いが分かれる傾向があるためです。しかし実際に飲んでみると、カスクストレングスでありながら非常に滑らかで、グレングラッサが持っている甘い香りやPXシェリー樽由来の味わい深さが感じられました。この原酒の良さを生かすためには、カスクストレングスでのボトリングが最適だと思い、アレンジなしで進めることになりました。
グレングラッサ自体、実は生産量が多くない銘柄で、さらに近年のシェリー樽不足によりシェリー樽熟成のウイスキーの価値も上がってきています。この2つの特徴を持った今回の原酒はとても飲みやすく、万人におすすめできるボトルになっています。
『こだわりのボトルデザイン』
- 今回のオリジナルボトルの特徴を教えてください。
今回のオリジナルボトルはウイスキーボトルとしては珍しい四角形のボトルに仕上げています。これはBARに飾る際、異なるサイズのボトルと同じ棚に並べた時にも綺麗に見えることからインテリアとしても使うことができるので、あえてウイスキーボトルとしては珍しい角ばった形状に仕上げています。
ラベルデザインには、BARの特徴であるグリーンバックのボタニカルと、オープン当初からお店のキーカラーとして内装や従業員の制服に取り入れているネイビーを使用しました。全体的にダークトーンのネイビーにして、葉っぱの装飾も単純なグリーンではなく、ボトルカラーのネイビーに寄せて暗めにデザインしています。
- ボトリングの際に苦労したことを教えてください。
オリジナルラベルのイメージを海外のデザイナーさんに送る際、自分が想像しているボトルのイメージを伝えるために、今回のデザイン案と一緒に何種類か画像を送りました。しかし、相手方からいただいた原案と自分のイメージがなかなかすり合わず、何度も修正を重ねたことには苦労しました。
- 今回のオリジナルボトルについて、作成から実際に手元に届くまでにかかった期間を教えてください。
ボトルの在庫が確保できた後、デザインなど相手方とのやり取りを挟みつつ、オリジナルボトルが手元に届くまで2〜3か月程度かかりました。
『ボトリングサービスの将来性』
- 今後またボトリングサービスを利用するなら試してみたいことを教えてください。
ボトル詰めをする原酒や味に言及すると、ハイボールに適した加水した度数40%ほどのウイスキーを作ってみたいと思っています。今回のオリジナルボトルはカスクストレングスということもあり、是非ストレートで飲んでいただきたいのですが、それだとウイスキーを飲み始めたばかりの方にはなかなかおすすめ出来ません。BAR FIVE Arrowsの位置する新宿は、仕事帰りのお客様が多くハイボールの需要が高いエリアですので、次回ボトリングする際は、ハイボールでも美味しく飲んでいただけるようなウイスキーを造ってみたいですね。
また今回のボトリングを通して、今自分の頭の中にいくつか試してみたいボトルのデザインが思い浮かんでいます。今後は、ボトル全面にデザインが施されたものや、既存のウイスキーボトルにはないデザインを追求して、自分のやりたいこと、自分が持っている世界観を全力でオリジナルボトルにぶつけていきたいです。
- 今後またボトリングサービスを利用するなら試してみたいことを教えてください。
第一に、お店で様々なお客様に飲んでいただきたいです。その上で、ボトリングサービスの存在をもっと多くの方に伝えていきたいと思います。ボトリングサービスに興味はあるけど、不安要素からなかなか一歩を踏み出すことができない方に、思っている以上に簡単にボトリングすることができると知っていただきたいです。
『Barならではのオリジナルボトルの使い方』
- 今回作成したオリジナルボトルの利用用途を教えてください。
自分だけのオンリーワンのウイスキーボトルを作ることができる点はやはり魅力的です。なかなか日本でウイスキーのオリジナルボトルを持っている人はいないと思います。
また、オリジナルボトルに自分のBARのロゴや名前を入れ込むことで、一種の名刺のような使い方ができることは新しい発見でした。オリジナルボトルを置いていただいたBARに訪れたお客様との会話で「BAR FIVE Arrows」の名前が出れば、自分のBARをもっと多くの方に知っていただくきっかけにもできると思います。