オリジナルボトルの作成は、自分が思い描く理想のウイスキーを形にできる唯一の体験である。
今回はWhisky Cask Ownershipが再び手掛けるオリジナルボトルへの想いと、ボトリングへのこだわりについて迫っていく。
インタビュー
『希少な原酒を用いた、ウイスキーボトルの作成』
- オリジナルボトルにグレングラッサを選択した理由を教えてください
今回、弊社で再びオリジナルボトルを作成するにあたり、当時入手可能な原酒リストの中にこのグレングラッサを見つけました。個人的にもお気に入りの銘柄だったことに加え、PX(ペドロヒメネス)シェリー樽熟成であることが決め手でした。
PXシェリーとは、シェリーの中でも最も甘みが強く、貴腐ワインのような独特の風味をウイスキーに与えます。昨今のシェリー樽不足もあり、PXシェリーで熟成されたグレングラッサであるという点は、希少性という面でも非常に魅力的だと感じました。
- 今回のオリジナルボトルの特徴を教えてください。
カスクストレングス(加水処理等を施さない樽から出したままのアルコール度数の原酒)である点が挙げられます。前回、弊社でボトリングした「アードモア12年」は、飲みやすさを重視して加水を行いました。ですが、今回はボトリング前に社内で試飲会を行った際、PXシェリー樽熟成のグレングラッサという原酒の美味しさを最大限引き出すには、カスクストレングスが良いという結論に至りました。
『幅広い選択肢から、理想的なデザインに』
- 今回のオリジナルボトルでこだわったことを教えてください。
沢山ありますが、一つにボトルの形状が挙げられます。前回のアードモアボトルの形状をそのまま引き継ぐのではなく、ボトリングするウイスキーそれぞれに見合ったデザインにしたいという想いがありました。
PXシェリーカスクの存在感のある味を表現するために、あえて横に広がりを持たせた重みのあるボトルを探し、このボトル形状を見つけました。候補はいくつかありましたが、リスペクトの意味も込めて、グレングラッサ蒸溜所のオフィシャルボトルの形状に近づけた、こちらの形状を選びました。
『オリジナルウイスキーで、感謝の気持ちを伝える』
- 今回作成したオリジナルボトルの利用用途を教えてください。
基本的な利用用途としては、前回と変わらず、お客様や提携先とのコミュニケーションに使用する予定です。日頃お世話になっている方々とのご縁を大切にしつつ、感謝の気持ちを、カスクストレングスのウイスキーという形で届けていきたいと考えています。
- オリジナルボトルを渡した際の、お客さんの反応を教えてください。
オリジナルウイスキーのギフトということで、珍しいと喜んでいただいています。特にウイスキー好きのお客様には大変好評です。PXシェリー樽、8年熟成、カスクストレングスなど、グレングラッサとしてはかなり珍しい組み合わせですので、純粋に美味しいウイスキーとして、飲んで愉しんでいただけています。グレングラッサのオフィシャルボトルは加水しているものが多いので、「原酒の味はこういうものなのか」と、新たな発見ができたという嬉しい感想もいただいています。また、ボトリングサービス自体に興味を持ってくださるお客様も多くいらっしゃいます。
『3か月で届く、唯一無二のシングルカスク・ウイスキー』
- オリジナルボトルが作成から実際に手元に届くまでにかかった時間を教えてください。
デザインなど事前に決めるべきことが決まってから、約3ヶ月でオリジナルボトルが手元に届きました。ただし、ボトリングする原酒は最後まで悩み、時間をかけて選定しました。以前のアードモア12年は、COVID-19の影響で輸入に時間がかかってしまいましたが、今回はCOVID-19がある程度収束したこともあり、スムーズに輸入手続きを行うことができました。
- 最後にボトリングの魅力を教えてください。
今回弊社がボトリングしたPXシェリーカスク熟成のグレングラッサのように、ボトリングサービスで選択できる原酒の中には、普段なかなか見かけないような銘柄や熟成タイプのウイスキーが眠っています。
世の中にはないボトルや、蒸溜所・大手ボトラーズが販売できないようなウイスキーを自分たちの手で造ることができる。これは非常に魅力的な体験です。
今後、またボトリングサービスに携わる機会がありましたら、ボトリングする原酒のイメージに合わせてラベルをデザインしてみたり、特殊な形状のボトルを選んでみたりと、幅広いオプションから自分が思い描く世界に一つだけのウイスキーを作ってみたいです。